虫歯がなくても、かみ合わせが悪いことで体全体及ぼす悪影響はとても大きなものです。その為、歯列矯正をすることではさまざまな身体のトラブルを予防できます。もちろん妊娠中であっても、歯列矯正をすることは可能です。むしろ、営業職などに就いていた人で、仕事上の事情で歯列矯正ができなかった人には、妊娠の為に休職している期間は、歯列矯正をするチャンスとも言えます。

妊娠中に矯正をすることで防げること

多少歯並びが悪くても虫歯や歯周病がなければ口腔ケアは万全と考える方が多いと思います。しかし、歯並びの悪さ、噛み合わせの悪さは、さまざまな身体のトラブルに繋がります。靭帯が緩み、骨盤など体のバランスが乱れやすい妊娠中の身体に備えて、妊娠前に歯列矯正をしておくことが理想的ですが、妊娠してからでも間に合います。出産後は、おんぶや抱っこ、おむつ替えなど体が歪みやすい動作が増えますので、妊娠中に歯列矯正をし、バランスの良い身体を整えましょう。

歯列矯正の目的

理想的な噛み合わせの状態を作る

全ての歯が均等に噛み合っている状態が理想的な噛み合わせです。左右の奥歯が均等に噛み合っている、下の前歯が上の前歯の裏側に噛み合っている状態であれば、顎関節が正常な位置に保たれます。この理想的な噛み合わせの状態を作る為には、奥歯から前場までが均等に並んでいる必要があるので、良い噛み合わせにする為には、歯列矯正が必要なのです。

手入れのしやすい歯並びにする

均等な歯並びは、噛み合わせを良くするだけではなく、歯磨きのしやすい状態にします。歯が均等に並んでいないと、磨き残しができてしまい、虫歯や歯周病にかかりやすくなってしまいます。妊娠中にはホルモンバランスの変化によって、口内環境が悪化しやすいので、より虫歯や歯周病のリスクが高まってしまいます。

噛み合わせが悪い場合に高まるリスク

  • 口腔内 虫歯、歯周病にかかりやすくなります。
  • 顎関節 顎関節のバランスが悪くなります。その結果、話がしにくい、上手に食べ物が噛めない、噛むときに顎関節に痛みを感じるというような症状が出ます。
  • 全身 顎関節のバランスが悪くなることで、頭部の位置が正常な位置からずれてしまうので全身のバランスが悪くなります。その結果、重い頭部を正常に保つことができない為、姿勢が悪くなります。頭痛、肩こり、腰痛などが起こるほか、耳鳴り、めまい、目のかすみなどが現れる場合もあります。また、身体全体のバランスが悪くなることから、消化機能が低下することもあります。
  • 精神状態 食事がしにくい、関節に痛みがあるなどの肉体的なストレスが、精神的なストレスになってしまいます。また、体の歪みから自律神経のバランスが悪くなるので、ストレスが溜まりやすくなります。

歯列矯正の種類

  • ワイヤー矯正 歯の前側にブラケットという矯正用の装置を付けて行う最もポピュラーな方法です。ブラケットには、金属の他に、セラミックスやジルコニアなど目立たない素材で作られたタイプもあります。治療期間中は装置を取り外すことができない為、口腔ケアが難しくなります。
  • 裏側矯正 リンガルブラケットという歯の裏側に取り付ける金属の装置を取り付けて行う方法です。歯の裏側につけるので目立たないと大きなメリットがあるのですが、技術的に非常に難しいため、通常のワイヤー矯正より割高であること、限られた歯科クリニックで歯科治療を受けられないことという問題点があります。治療期間中は装置を取り外すことができない為、口腔ケアが難しくなります。
  • マウスピース矯正 透明なプラスチックの装置を歯にかぶせて矯正する方法です。食事、歯磨きの時には取り外します。

妊娠中に歯列矯正する場合に心配なこと

妊娠中にも歯列矯正をすることはできますがその場合、いくつか注意しなくてはならないポイントがあります。

虫歯と歯周病

ブラケットというワイヤーを使った矯正装置を使用するので、歯磨きがとても難しくなります。そして妊娠中には通常より虫歯や歯周病のリスクが高まっているので、丁寧なケアが必要です。

妊娠中には、ホルモンバランスの変化で唾液の量が減り、口腔内が酸性に傾く為、虫歯が発生しやすい状態になっています。さらに、悪阻のせいで歯磨きがおっくうになる、嘔吐した際に胃酸が歯の表面を溶かすので、歯に汚れが付着しやすくなる、いっぺんに食べられないので、食事回数が増えるといったことが、より口腔内を酸性に傾けていきます。

さらに、妊娠によって免疫力が低下している為に、細菌が繁殖しやすくなっていることから、通常よりも、虫歯ができやすい、歯周病になりやすい状態になってしまうのです。

矯正装置

悪阻や体調の悪い時にも装置を取り外すことができない煩わしさが不安になる方もいらっしゃると思います。そのような場合には、取り外しのできるマウスピース矯正という方法にするという選択肢もあります。矯正を始めるにあたって行われるカウンセリングで、担当の歯科医とよく話し合い、自分にとって不安なく続けられる治療方法を選びましょう。

妊娠中の口腔ケア

妊娠中は口腔内の状態が悪くなりやすいので、丁寧な歯磨きをすることが大切です。

歯磨き

歯列矯正の装置を付けていると、通常より磨き残しが残りやすくなりますので、矯正用の歯ブラシを使った丁寧なブラッシングが必要です。

ブラケットの周りはブラケットと歯の間に歯ブラシをななめ45度にあてて磨きます。歯と歯ぐきの間、歯と歯の間は、歯ブラシの毛先をあてて1か所を20回以上、軽い力で小刻みに動かして磨きます。特に歯ブラシが届きにくい奥歯や前歯の裏側は磨き残しにならないよう、丁寧に磨く必要があります。

悪阻で歯ブラシを口に入れるのが嫌な時期には、子供用の歯ブラシやワンタフトブラシを使うと良いでしょう。歯磨き粉の味やにおいが我慢できない時は、何もつけなくても歯磨きできます。歯磨きは、就寝中に口内に溜まった雑菌を除去する為の朝の歯磨き、毎食後の歯磨き、就寝前の歯磨きと、間食をしない人であっても、1日に5回行い、就寝直前にデンタルリンスもしておきましょう。

PMTCを受ける

PMTCは、歯科クリニックで受けることのできる歯のクリーニングです。毎日の歯磨きでは取り切れない歯石や矯正装置の周囲の磨き残しを取り除いてもらえます。クリーニングの前にどの程度歯垢が付着しているか調べてもらえるので、毎日の歯磨きで磨き残している部分を知ることができます。クリーニング後に、歯磨き指導をしてもらえるので、磨き残しを減らすことができます。

口腔ケアを怠った場合のリスク

虫歯や歯周病になってしまい、おなかの赤ちゃんや、出産後の子供に悪影響を与えてしまいます。

  • 歯周病 歯周病になってしまうと、お腹の赤ちゃんが低体重児になったり、早産したりするリスクが高まります。
  • 虫歯 出産後、育児をする時期にお母さんに虫歯があると、子供にも虫歯が感染してしまいます。子供の生えたばかりの歯は、まだ弱く、柔らかい状態です。ミネラルを十分に吸収して硬い歯に成長していく過程で、虫歯菌が感染してしまうと、乳歯が虫歯になってしまいます。大人の歯と違って、乳歯は虫歯菌がつくと、あっという間に、虫歯が進行してしまいます。そして、虫歯になりやすい歯の質になって、虫歯を繰り返すことになります。さらに、永久歯に生え変わった時に、歯並びが悪くなってしまいます。

まとめ

身体のバランスを整えるためには、矯正治療は非常に有効です。虫歯や歯周病などの口腔トラブルだけではなく、頭痛や腰痛など体全体のトラブルも防ぐことができます。

仕事が忙しく、治療に踏み切れなかった人にとっては、妊娠で休職している期間が良いタイミングであるとも言えます。矯正治療をする、しないは別にしても、妊娠中の口腔ケアは非常に大切なことなので、PMTCを受けに行き、ついでに歯列矯正について相談してみるのも良いでしょう。